日別アーカイブ: 2014年6月3日

改造は最後まで気を抜くな

ヒトヨンヒトマル。ここは、鎮守府内にある霊力術式展開所。

霊力術式展開所は、開発、建造、艦装の改造など、妖精の力を借りた霊力術式を実行するために造られた場所である。
内部はかなり広く、400畳ほどの広さで、下は土で固めてある。

すぐ隣にある資材倉庫からは、屋根付きの廊下でつながっており、術式実行時に必要な資材が運搬しやすいように設計されている。

展開所には、すでに改造に必要な資材が運び込まれており、あとは主役を待つだけだ。
本日は、鈴谷を改に改造するのが目的である。

提督「しっかし、遅いなー鈴谷。」
青葉「そーですねー。まだ見えませんねぇー。」

提督と共に鈴谷を待っているのは、青葉。
改造は、艦娘たちにとって晴れの舞台であり、鎮守府内の報道を担当している青葉が同行するのが常であった。

鈴谷「チーッス、提督。」
提督「チーッスじゃないでしょ。とっくに時間すぎてるんだけど。」

予定開始時刻を10分以上遅れて、鈴谷が姿をあらわした。
青葉は、やっと到着した主役に食いつくように、カメラのシャッターを何度も切った。

鈴谷「熊野と一緒に準備してだんだよねー。」
鈴谷「なんか髪型きまんなくってさー。」
鈴谷「おー、青葉じゃん。」
鈴谷「ここ見てよ。きまってるでしょー。」
. . . . .
. . .
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長い、遅れてきたのに話が長い。

提督「と、とにかく、時間おしてるから。さっさと始めるよ。」

話を遮られた鈴谷は、プクッと頬をふくらませ、不満そうな顔を浮かべてる。
長くなりそうなので、提督はすぐさま術式展開の準備に入った。

提督「鈴谷、あの円の中央に立って。」
鈴谷「了解ぃーす。さてさて、改造しちゃいましょぉー。」

土で固められた地面には、大きな円が描かれており、周囲には術式用の文字で、構築式が記述されていた。
大きな円の中には、円を2分するようにさらに2つの円が描かれている。片方には、改造に必要な資材、そしてもう片方に鈴谷が立っていた。

そして、大円を4人の妖精が取り囲む。
その円の淵に、提督が足を進め、妖精4人と提督は、大円の周りに等間隔に立った。

提督「鈴谷の改造術式を開始する。」

提督が霊力を展開しながら、構築式を唱える。
妖精もそれぞれ霊力を解放し、構築式を唱え始めた。

円の内部が強い光で包まれ始める。

鈴谷「んっ…あっ…」

鈴谷が声を漏らす。聞くところによると、霊力術式は心地がよいらしい。

霊力を展開し続ける提督と妖精。さらに強くなる光。
鈴谷の艦装が、ゆっくりと変化しだす。

鈴谷「んっっ…」

目がくらむほどに強くなったあと、資材とともに光は消えた。
円の中には、新しい艦装を身につけた鈴谷が立っていた。

鈴谷「あ..んっ…」
提督「ふぅー。改造術式完了。どうだ、鈴谷。問題ないか?」
鈴谷「ほぉー、強くなってるじゃん。」

新しい艦装に鈴谷も満足そうである。
青葉は舐めるようにレンズを向け、シャッターを切った。

提督は、すぐに新しい艦装のチェックを始めた。

提督「うーん、20.3cm連装砲と21号対空電探、そして瑞雲か。結構いいね。とりあえず、空いているスロットには、予備の20.3cm連装砲をつけておこう。」

提督は手元にあった20.3cm連装砲を鈴谷に付ける。

艦装の付け替えは、艦装と霊力を融合させるため、直接艦装者の体に触れ、霊力をゆっくりと込めながら作業する必要がある。

しかし、端から見ていると体をまさぐっているように見えるかもしれない。

鈴谷「鈴谷の甲板ニーソ、そんなに触んないでって、もー!」
提督「いや、わざとじゃないって。艦装を入れ替えてるだけだから。しょ、しょうがないでしょ。」
鈴谷「なーんか、手つきがあれなんだよね。提督ってさー。」

いや、どう見ても、まさぐっているようにしか見えない。

カシャッカシャッ!

勢いよく、シャッター音が空を切る。
その瞬間、提督は我に返った。

…しまった、今日は青葉がいたんだった。

提督「あっ、青葉ちゃん?報道は、正確に。事実を伝えないとね…」
青葉「そーですねー。」
提督「あれだ、そう、今、装備換装してたんだよね…」
青葉「...そーですねー。よく見えますねぇ。

青葉は、カメラのサブウインドウを見つめていた。
ニヤニヤしながら、画像を確認している。

提督「まって、青葉ちゃん…」
青葉「それでは青葉、”正確”な記事の作成に入りまーす。」

青葉は、一瞬にして提督の目の前から消え去った。

とりあえず…明日は休もう…