オネギはもうお断りなのです!

← 勃発!その4 からの続き

<英語>
海外軍司令「2番艦、全砲門、開け!撃っーーー!

海外軍司令の号令とともに、2番艦の砲門が火を噴く。

空気を切り裂いたその砲弾は、一斉に電に向かっていた。

霧島「敵弾、電を捕捉。着弾まで、29, 28, 27…..」

霧島が状況を分析し、艦隊のメンバーにインカムで伝える。

木曾「電、向かってるぞ、回避しろ。」
電「了解なのです!」

電は、蛇行しながら敵弾を回避する。
そもそも、電にあたりそうな砲弾は数えるほどもなかった。

<英語>
海外軍観測員「全弾回避されました!敵艦、損害ありません。」
海外軍隊員「司令、いくらなんでも目標が小さすぎます。」

そう、艦娘の大きさは人となんら変わりがない。
その大きさで動き続ける的に対し、通常の砲弾で当てるのは至難の業である。

木曾は、畳み掛けるように指示を出す。

木曾「金剛、目標、敵4番艦。砲撃準備開始。」
金剛「了解デス!次は私の番ネー。」
木曾「金剛、派手なのを一発頼むぜ!」
木曾「ってーーーっ!!
金剛「撃ちます!Fireー!

轟音とともに、46cm三連装砲が震える。
銃口からは炎と共に、砲弾が発射された。

<英語>
海外軍観測員「敵艦、砲弾発射、目標は…4番艦です。」
海外軍司令「4番艦、聞こえるか!回避しろ!敵弾は通常の砲弾と同等に対処せよ!」

しかし、4番艦の艦長は、呆気に取られていた。
目の前で起きている事を、まだ理解できていない。

回避行動を取るには、完全に出遅れた。

<英語>
海外軍観測員「やはり、あの砲弾はこちらまで届きます!4番艦に着弾まで、9, 8, 7…」
海外軍司令「4番艦、回避しろっ!いいか、あれは人間ではない!兵器だ!!!
海外軍観測員「回避、間に合いません!3, 2, 1…着弾!」

海に鳴り響いたのは、砲弾が艦艇に着弾した音であった。
金剛の放った砲弾は、見事に命中し、海外軍の4番艦を大破させた。

提督「…よし、いいぞ。これで終わりだ…」

提督は安堵の表情を浮かべた。
弾はすべて演習弾だ。妖精からの報告で、着弾前の霊力術式展開も確認されている。
30分もあれば、元に戻る。あとは、あの海外司令のご機嫌をとって…

提督は胸を撫で下ろし、演習後の事を考えていた。
霧島も息を吐いて、表情を緩ませる。

. . . . .
. . .
.

その時、発射音が空を駆けた。

霧島の顔が、真剣な表情に変わる。
いま聞こえたあれは、砲撃音ではない、何かの発射音だ。

すぐに、妖精からの報告を確認する。

霧島「敵2番艦から砲弾発射…いえ、ミサイルです!」
提督「え?」
霧島「演習弾ではありません。ハープーンです!!

インカムを右手で押さえ、不安な表情を浮かべながら報告を続ける。

霧島「速い…木曾に向かっています!着弾まで 15, 14, 13…」

状況を分析する霧島のインカムに、直接入電が入った。

海外軍司令「Oh!Sorry!です。あれは Friendly fire デス。スミマセ…」
霧島「わかりました。誤射、ですね…」

霧島は挨拶もせずに、すぐに回線を切った。

もちろん、誤射のはずがない。
演習弾は事前に渡している。それ以外の弾の装填がないことは、演習前に提督が確認している。

海外軍司令が指示を出したことは明確であった。
しかし、相手がすぐに誤射と申し出ている以上、それとして対応するしかない。

霧島の報告を、隣で聞いていた提督は、急いで指示を飛ばす。

提督「金剛、聞こえるか!今、木曾に向かっているのは演習弾ではない。誘導ミサイルだ。三式弾の射程に入ったらすぐに撃ち落とせ!」
金剛「Shit!了解!」

迫りくるミサイルに、身構える金剛。
いつもの砲弾とは、動きも速度もわけが違う。

チャンスは一度。真剣な表情で、左手を空に向けて差し出した。

金剛が三式弾を打ち出す、その刹那…

木曾「必要ない!

木曾の声が、金剛の動きを止めた…

金剛は、タイミングを完全に逸してしまった。
もう、対応できる術は残されていない。

霧島「着弾まで 8, 7, 6…」

状況を、全艦に伝え続ける霧島。
その表情は、ますます険しくなる。

提督「木曾!回避しろ!」

提督は、その指示が間違っている事に、すぐに気がついた。
あれは、誘導ミサイルだ。あの距離から回避できるものではない。

. . . . .
. . .
.

木曾は、神経を研ぎすまし、感覚の全てをミサイルに集中している。
そして、徐々に速度を上げながら、自身に迫り来るミサイルの動きをしっかりと見ていた。

木曾「…切り替わってるな。」

ハープーンが、アクティブレーダーホーミングに切り替わっていることを、目前で確認した木曾は、ハープーンに背を向け、一気に海を駆け出した。

<英語>
海外軍観測員「4, 3, 2, 1 …着弾…しません!」
海外軍司令「…なに!」
海外軍観測員「ハープーン、目標を追跡中。距離、離されます。200, 300…」
海外軍司令「…!?、あれはマッハ 0.7 以上で動いているんだぞ!」
海外軍観測員「目標との距離、500を保ったまま追跡を続けています!」

提督は、即座にハープーン迎撃の指示を出す。

提督「…木曾、回頭して金剛の方へ。金剛と電はハープーンを撃ち落とせ!」
金剛、電「了解!」

なぜ、艦娘がこの速度で動く事ができるのか。

艦娘は、霊力術式によって、自分の持つ艦艇の型の出力を、ほぼロスなく推進力に変換できる。
重量は、艦装展開した状態でも、人間の高々数倍。

重量はそのままに、艦艇の出力を、霊力術式によって空気、水の抵抗をほぼなくすことにより、爆発的な推進力を生み出すのである。

木曾「必要ない。あの、無能な司令に、艦娘の、本当の戦闘ってヤツを教えてやる。」

提督は、木曾の考えをすぐに察した。
やめて、それだけはやめて。
必死に、インカムに話しかける提督。

提督「木曾、あれは誤射だ。連絡も入っている!今すぐ…」
木曾「なんだ、言質とれてんじゃねぇか。じゃあ、心配するな。」
提督「…金剛、電、何としても撃ち落とせ!」

しかし、金剛と電は、気のない返事をした。
誤射と聞いて、むしろ、木曾に乗っかっていた。

<英語>
海外軍観測員「目標、回頭してこちらに向かってきます。25, 24, 23…」
海外軍司令「バカな!」
海外軍隊員「司令、ご命令を!」
海外軍司令「90度面舵いっぱい!あのマントをよけろ!」

しかし、海外軍司令は、回避する機会を完全に逃した。

木曾「おせえんだよ!無能!」
木曾「まあ、原子力空母を壊しちまったら、あとで面倒だな…」
木曾「艦娘ってのは、こういう戦い方もできるんだぜ。」

木曾は、空母の船首に向かい、その推進力を上に向けた。

その瞬間、木曾の体は空を駆ける。
身にまとった外套をはためかせ、水しぶきとともに船首を飛び越した。

木曾を追跡し続けたハープーンは、目前に現れた空母の船首に着弾。破壊した。

. . . . .
. . .
.

艦娘たちの圧勝であった。

提督は、真っ青な顔で引きつりながら、完全に固まっていた。
ヤバい、ヤバすぎる。レ級の方がまだかわいい。
演習で、しかも視察に来た海外部隊の原子力空母を、実弾で小破って…

霧島「まあ、大丈夫かと。敵空母の被弾は、自から放ったハープーンですし、こちらに落ち度はありません。記録もありますし、本部には私が報告致します。」
霧島「…司令?」

それから、提督は完全に呆けたまま、一日を終えた。

. . . . .
. . .
.

翌日、本部からは、顛末書の提出を求められただけで、特にお咎めは無かった。
霧島が記録を元に、本部に掛け合ってくれたようだ。

しかし、次の日から、提督には別の問題が発生した。

霧島「…また、例の入電です。つなぎます?」
提督「…つないで…」
海外軍司令「Oh! 提督ドノ!電ちゃんを是非うちにトレード オネギ します!」
提督「い、いや、その件は何度もお断りしたはずです…」
海外軍司令「オ ト ウ サ マ!宜しく オネギ し…
提督「…切ります…」

電は、実弾で小破した空母に真っ先に駆けつけ、乗組員の救助に当たった。
特にあの海外軍司令に、とても気に入られてしまい、毎日ラブコールがかかるようになってしまったのである。

あの オネギ は本当にしつこい。
提督は右手で顔を押さえながら、ため息をついた。

そこに、本部から入電が。

本部「あー、明日なんだけど、イギリス海軍から視察の申し込みがあって…」
提督「…お断りで オネギ シマス。

Fin.

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コメント(2)

  1. 一気に読んでしまいましたw
    木曽かっこいい!決めセリフが綺麗にハマッてる小説って凄いですね。
    頭の中で木曽改二が飛び回りましたw

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